「映像制作実習」作品上映会を終えて

上映会

 こんにちは。2021年度映像制作実習・上映会担当の相馬です。このブログの別記事に別の担当として記事を書かせていただいてる通り、この授業は誰が何を担当するというのがとてもあいまいで、それぞれがいろいろなことをやります。だから上映会担当かといわれると、上映会のためにもっと頑張ってくれた仲間はいるからちょっとピンとこないなと思いつつ、「作品づくりと上映会運営を通してやった人」として、もう最後になってしまうのでこれを機に映像制作実習という授業を通して考えたことを書かせていただきます。

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 1月22日に行われた2021年度「映像制作実習」作品上映会にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。リアルタイム配信をご覧いただいていた方に関しましては、映像の不調によりお楽しみいただくことができず大変申し訳ございません。急遽決まったアーカイブ配信をご覧いただいた方には、お忙しいなか時間を割いていただき感謝申し上げます。ご覧になれなかった方にも向けて、今回の作品をまた皆様の目に触れる機会をつくれるよう微力ながら精進してまいります。

 「映像制作実習」を受講していたこの1年間は、いろいろな他者のことを考える時間でした。授業で出会った仲間たち、会場に足を運んでいただく方たち、撮影にご協力いただく方たち、愛ある指導いただいた先生方…さまざまな人のことを想像しながら日々を過ごしてきました。べつに、生きるってことがそういうことなだけかもしれないですけど、大きなスクリーンに映された映画とそれにまなざしを向ける人、時間も空間も離れている他者どうしが想像しあう時間はやはり特別です。安心して生きられる閉ざされた世界につい自ら身を置いてしまいがちな現代ですが、映画をつくるなかで確実に自分の外側の世界に目を向け続けました。

 もともとこの授業を受けたいと思ったのは、知らない誰かと何かをつくってみたいと思ったことがきっかけです。大学とは本来そういう出会いの場であるのに、特にこの二年間私たちは、誰かと出会い深くつながる経験から、学びの場に限らず遠ざけられてきてしまいました。そういった誰が悪いでもない不安は私たちを、何かを表現したいという空虚な焦燥へと駆り立てました。

 楽しそうと思っていたことはちゃんと楽しくて幸せでした。同時に、自分たちが思いをこめてつくったものを誰かに見せることは、たとえ仲間にであっても不安でした。そして自ら映画作りを実践することを通して、一本の映画は、やりたかったけどできなかったことの無数の屍の上に立っていて、限られたできたことのなかからそれでも無限に広がる答えを探した結果できたものだと学びました。世界が具体的であるがゆえについてまわる様々な制約と折り合いをつけていくなかで逆に見えてくるものもありました。そういうことを繰り返して映画のなかに一つの答えを見出す表現者の勇気が、これまで何気なく観ていた映画にも込められていたことを知って敬服します。そしてそんな勇気を同年代の仲間が振り絞る格好良さにとても憧れます。

 だから、この上映会という場がどうしてもあってほしかったです。上映会の運営に携わるようになったのはほとんど成り行きでしたが、作品の完成と披露の場が近づいていくにつれ、つくった映画を多くの人にみていただく場をつくりたい思いはどんどん切実になっていきました。だから最近、再び人が集まることが危ないことに変わっていく世界が本当に憎くて、ひとの命のためにされるさまざまな決断を臆病だと断罪してしまうような瞬間もありました。結局、当初予定していた通りの上映会を開催することは出来ませんでしたが、さまざまな方のご配慮とご協力の結果、なんとか作品を披露する場を設けさせていただくことができました。

 万全な準備をできたと思っていたけど、終わってみて思うのは「もっとこうしてればなぁ」ばかりです。悔しいですが、そうやって”できなかったこと”があるからこそ私たちは前に進んでいけるのかもしれません。そう思う今、出来上がった作品をみてはじめて、今年度の4作品はどれも”あの日私ができなかったこと”がきっかけになっているのではと気づきました。つくられた物語は妄想に過ぎないかもしれないけれど、作った人と見た人がいることは絶対的な事実で、それはかなり深い関係なのではないでしょうか。そういう場をつくる体験をさせてもらえたのはとても光栄です。こんなご時世のなかで開催したからこそ、人と人が、人と作品が出会う場所が常にあることの奇跡が身に染みています。

 来ていただいた方からお寄せいただいた感想を、アンケートをつくった者の特権として一足早く読んでからこれを書いています。誰かに観てもらうことそれ自体が新たな作品をつくるように豊かなものだと改めて思います。また私たちは優しい人たちに囲まれて生きてきてこれからも生きていくことができるのだと、祭りのあとの昂ぶりも相まって感じています。

 改めて、今回の上映会をご覧いただいた皆様、ご協力いただいた方々に感謝申し上げます。あなたのためになれたかどうかわかりませんが、少なくとも私のための時間にはなりました。他者だった皆様も決して他人ではないなと今は思っています。ありがとうございました。

2022/01/23(日)

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